タスク4:透明人間

彼とはもう別れた。

先週のことだ。けんかの原因ははっきり覚えておらず、けんかした後で何か起こったかも私の記憶になかったようだ。確か私たちのアパートから出て、ドラマみたいに雨も降って、私は歩道を歩いていて…。そして、目が覚めた。1年前に彼と一緒に住むことになったアパートではなく、自分が彼と付き合う前に買ったアパートで。状況をつかむことができたとたんに、涙が流れてしまった。

それから一週間が経ち、自分の部屋に閉じこもらずに外に出ることにした。しかし、目の前にあるのは彼の喫茶店だった。無意識にここに来たなんて自分に情けない。せっかくここまで来たから、わけがわからないが入ることにした。普通にカウンターに向かってゆき、普通にコーヒーを注文した。が、カウンターに立っている彼に無視され、注文もお金も受け取ってもらわなかった。ただ1週間しか経っていないのに、無視されるなんてありえないだろうと思った。

そこにしばらく立っていたが、彼は私の存在に気づいていなかったようだ。

そのままでは無駄だなあと思い、その代わりに彼と付き合っていた間にいつも座っている席に腰をかけた。幸いなことにその席は空いている。座ってボーっとして外を見ているうちに、彼が何も言わずにコーヒーカップをそっとテーブルの上に置き、カウンターに戻った。最初はわからないが、彼が言ったことを思い出した。

「俺の恋人になったら、一生コーヒーは無料だよ!」って。彼が約束を守ってくれたのだ。

あの日から2週間、私は毎日彼の喫茶店に通っている。毎日は相変わらず、言葉を交換せずに、目も合わずに、私は私の場所に、彼は彼の場所に。彼にとって私は透明人間なのかもしれない。私はただその席から彼を見る。いつも見えるのは彼がカウンターの後ろにある部屋へ入り込み、誰かに笑顔を見せることだ。

「その部屋の中を見て、いつもにこにこしてるって、誰がいるのかな?」といたずらにお客さんが彼に言った。

「彼女だよ!」と笑顔で答えた。

「えっ、会いたい会いたい!紹介してよ。」

「ダメ!彼女は私だけのものだから。」

そうか。そうだよな。私と別れてすぐ彼女ができたなんてずるい。

そうした日々は続き、私はまだバカみたいに彼の喫茶店に通っている。そこにいる時に、いつもその部屋をじっと見ていて、ついつい彼女のことをうらやましく感じてしまう。私はこんなバカなことをもうしたくない。そこで、私は決めた。一回だけ彼の新しい恋人の顔を見て、あきらめる。自分の新しい人生を始めたい。

彼がその部屋のドアを開けるときに、私はひそかに中を見た。

とたんに、涙が流れてしまった。

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